奈良盆地の地理
奈良盆地は、奈良県のうち「北西部」に位置する盆地です。
周囲は東側を笠置山地(大和高原)、西側を生駒山地、金剛山地、南側を竜門山地によって囲まれています。北側には規模の大きな山地はありません。また、盆地から見て北西側は矢田丘陵・西ノ京丘陵といった丘陵地が広がっています。
大和川・佐保川を中心に多くの河川が見られ、農業用水の関係上「ため池」も多く見られます。他方で市街化が進んでいる場所も多く、様々な要素が混じり合った環境となっています。
全体的ポイント
天候は安定しやすい
奈良盆地の気候は、大きくまとめると「安定した傾向」と言えます。
これは、必ずしも「特によく晴れる」という意味ではなく、基本的に「荒々しい天気が少ない」という意味での「安定」です。
晴れたり、曇ったり、時に雨が降ったりするものの、極端な気象現象に見舞われるケースはまれで、こういった気候の特徴が、ある意味では「国のまほろば」として古い時代から政治・文化の舞台となった間接的な要因とも言えます。
特徴に乏しい「降水量」
奈良盆地一帯は、年間の降水量は、極端に少なくも多くもない、日本国内でもとりわけ「特徴がない」傾向を持つと言えるような環境です。
冬に少ない・梅雨時にやや多い・真夏にやや少ないといった傾向は「瀬戸内海式気候」の特徴そのものですが、雨の絶対量は岡山・香川といった降水量が少ない地域と比べ多く、大阪・神戸方面と比べても1割程度〜多いなど、必ずしも少なさの面で目立つ特徴はありません。
一方で、奈良県南部のような多雨地域ではなく、大雨となる場合の雨量で見ると、むしろ周辺地域より少ない傾向もあるなど、極端な雨となる頻度は抑えられます。
特徴に乏しい「晴れ間」
奈良盆地一帯は、晴れる頻度=日照時間の長さという面では、こちらも降水量と同様に、特段多くも少なくもない、やはり目立った特徴に乏しいと言える状況です。
周辺で見ると、大阪方面と比べ日照時間は1割程度少ないですが、この要因は内陸側の奈良盆地の方が、地形の影響などで生じる細かい雲に覆われる頻度が多い(特に冬場)ことなどが関係しています。
細かい雲は、多くの場合雨をもたらすものではなく、日差しを一部遮る程度の場合が多いため、大阪方面より晴れ間が少ないことが、大阪方面よりも「天気が明らかに悪い」ことは意味しません。
内陸のため風は弱め・一部で局地的な風あり
奈良盆地は、内陸部に位置し、海からの距離も遠いため、風は総じて弱めです。大阪・神戸のように海からの風がしっかり吹く地域とは、環境は大きく異なります。
但し、いわゆる「局地風」として命名されておらず、特段問題視はされていないものの、金剛山地・大和高原の一部など、盆地周辺の地形が影響し、「ある特定の気圧配置となった場合に、ある特定の地域だけ比較的強い風が吹く」ようなケースがまれに見られます。
季節ごとの傾向
春
気温 | ・概ね温暖 ・但し、内陸盆地のため3月を中心に朝晩はある程度「冷える」 ・5月の昼間は「汗ばむ陽気」も多い |
天気 | ・周期的に変化 ・晴れる日が多め ・長雨などはまれ ・3月に雪が降るケースはかなりまれ |
降水量 | ・徐々に増加の傾向 ・冬と比べ多く、梅雨時と比べるとまだ少なめ |
風 | ・影響は小さい ・その他の季節と比べると、風がある程度吹きやすい傾向はあり |
夏
気温 | ・昼間は早い時期から「十分に暑い」 ・京都盆地よりわずかに低い程度 ・市街地は内陸ながら朝晩も「寝苦しい」場合あり ・市街地以外では、朝晩はややしのぎやすい |
天気 | ・年ごとの差が大きい ・梅雨らしい梅雨となる場合も、梅雨らしさに乏しい場合も ・梅雨の後半を中心にまれに大雨も ・8月は通常「よく晴れる」時期 ・一方、台風の影響も8月を中心に時折見られる ・内陸のため「夕立(ゲリラ豪雨)」はやや見られやすい |
降水量 | ・6、7月に多い傾向 ・8月はやや少ない傾向 ・台風などの影響で、真夏に雨量が増えるケースも |
風 | ・通常は風が弱い傾向 ・台風の影響に限り、まれに暴風となる場合あり |
秋
気温 | ・残暑は厳しい ・10月以降は概ね秋らしい ・11月頃からは、内陸のため朝晩の冷え込みを感じやすい |
天気 | ・特段「良くも悪くもない」傾向 ・9月については、年によっては天候不順になる場合あり ・10月以降は、天気は周期的に変化しやすい ・9月を中心に、台風の影響を時折受ける(まれに10月も) |
降水量 | ・9月はある程度多い傾向 ・台風の影響を受ける場合、大幅に増える場合あり ・10月後半以降は一気に減る傾向 |
風 | ・通常は風が弱い傾向 ・台風の影響に限り、まれに暴風となる場合あり |
冬
気温 | ・内陸のため、大阪方面と比べると寒い ・但し、特段「寒冷地」ではない ・朝晩はある程度冷え込む ・市街地、それ以外など環境によって朝晩の気温は異なりやすい |
天気 | ・ある程度晴れる日が多め ・但し、地形の関係上「曇り空」の場合もやや目立つ ・雨は少ない ・雪は更に少ない ・積雪はかなりまれ、ほぼ積もらないような年も ・あくまでもまれながら、「南岸低気圧」による雪は関西の平地ではまだ見られやすい |
降水量 | ・はっきり少ない ・まとまった雨量を観測しない月も ・少ない降水量の大半は雨、雪として降るケースはごくわずか |
風 | ・「冬型の気圧配置」になると、北〜西寄りの季節風を感じやすい ・風による影響自体はほぼ生じない |